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ひらひらと、花びらがひとつ舞い落ちる。
黄昏の空の色合いによく映えていた。
そっと足を踏み出すと、聞きなれた二胡の音がした。

一瞬にして空は遠くなり、地は底へと永遠に下がっていく。
重力の無くなったその暗闇の中で、音だけが私に語りかけた。



「甘露茶を淹れてくれたんだね」

「ええ。貴方のしつこさに負けたのよ」

「嬉しいな」

「だけどそれ一杯だけよ、それ以上は体に悪いわ」


卓子の上には、白く柔らかな湯気と甘露茶。
そっと手に取ると、その熱が指先から肩へ、肩から鎖骨に
骨まで温かく溶けてしまうような不思議な感覚。

―これが欲しかった。
いや、欲しい。


「愛しているよ」


ただ一人、唯一君だけを想っている。
飽きずにいたことを嬉しく想ったのは、本当に愛していたから。


そっと、愛しい小さな背中に触れようとしたところで辺りが霞み
重い瞼がゆっくりと、しくしくとした痛みと共にひらいた。



「―…夢、か」



夢にまで見るほどに、君の甘露茶がほしかったと
月のない空を見上げながらそっと、再び瞼を閉じた。
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